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2012.08.11.1

 アゴタ・クリストフの戯曲を読んでいると、時々、東欧のいわゆるアネクドートを連想してしまう。こういう印象だけで、安易に何か関連づけたりするつもりはないけれど。
 簡潔な会話文とそこに含まれる辛辣な風刺性に、どこか通じるところがあるのだろう。その上で、アゴタ・クリストフの風刺は一地域、一時代の政治状況などとっくに突き抜けた射程をもってしまっているが。

 いわゆるアネクドート、旧社会主義圏の風刺小話を訳して集めた『スターリン・ジョーク』(平井吉夫編、1983年)という本を、私も一冊持っている。
 この本はいい本だと思う。洗練された訳文でとにかく面白く読めるし、編集にもセンスと気配りが見える。そして、これは私以外の人も言っていたが、「あとがき」がいい。

 ソ連・東欧の政治ジョークを集めながら思ったことが三つある、と編訳者の平井吉夫は言っている。
 一つは、よくできたジョークは国籍不明、設定を少し変えればいつどこでも通用するようなもので、ジョークから「民族性」を見出そうとしたりすればひどいまちがいを犯す、ということ。
 二つめは、「抵抗の武器としての笑い」という風刺論への疑問。その例として、「プラハの春」が始まるとそれまで大声で飛び交っていた政治ジョークが聞かれなくなり、「プラハの春」の敗北がきまるとまたぞろジョークが復活した、という経験を語る。そして、「人々がジョークをしゃべっているうちは体制は安泰、人々がジョークをやめたとき、本物の抵抗がはじまるのではないか……」と言う。
 三つめは、政治ジョークは「庶民の抵抗」という見方への疑問。「これは明らかにウソです」と断言している。「政治ジョークの語り手はいわゆる「庶民」ではなくて、支配者層の一員となるべく高等教育を受けたのに、さまざまな理由で落ちこぼれた手の白い人たちです」。そしてその証拠に「労働者あがりの指導者の無教養や無学歴をからかうジョーク」の存在と、そこに見える知識人たちの「貴族的メンタリティ」を指摘する。

 私もそれなりにひねくれた人間ではあるので、こうあざやかに解説されると、かえって「いや、そうばかりでもないんじゃないか……」と考えてしまったりもする。で、その通りだと思うかと言われれば必ずしも思わないのだが、それでも、この「あとがき」の文章は面白い。単に紹介するだけではなく紹介者の視点を語っていて、その洞察が鋭い。

 政治ジョーク自体は、こういうところなどネット上でもいろいろ読める。でもこの本、古本ではまだ買えるはずだし、一冊手に入れてみて損はないのではないか。
 

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岩尾忍

Author:岩尾忍
1980年生れ。
2010年、詩集『箱』(ふらんす堂)。

 

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